家にある本でイチジクについて調べたことのまとめ。「古代エジプト人に愛された話」「古代中国人にうるおいを与えた話」「現代版おいしい食べ方」の三本仕立て
うちのイチジク
台風が来ていますね。街を洗うような雨です
電車が運休したり、不便なこともあるかと思いますが、雨のお陰でだいぶん暑さがやわらいで過ごしやすくなりました
我が家ではイチジクを育てています
この4月に苗を買って、順調に葉が増えて、実も3つほど付けていました。ところがそのうちみるみる調子がわるくなって、葉の緑がくすんで縁のほうから枯れていくような感じになってしまいました。付けていた実もぽろぽろ全部落ちてしまいました
肥料のやりすぎと、植え付けた鉢が小さすぎたせいかなあと思っています
そしてここ数日の間に、葉に黄色い斑点まで現れてしまいました。もう見てられなくて、一番植えかえに不向きな8月に植えかえたところでした。なので、この雨で気温が下がってくれて、かなりほっとしています。回復してまた元気に育ってくれますように
さて、今回はそんなイチジクの話です。このお天気ですから、外に出かけるのは遠慮したいので、うちにある本でイチジクについてお勉強したいと思います
古代エジプト人に愛された話
イチジクは長い歴史をもつ植物で、エジプトでは葡萄、椰子の類、柘榴とならんで古くから知られていたようです。ふつうのイチジクとシカモアイチジク(エジプトイチジク)があり、人々にたいへん好まれた果実でした
お墓の浮彫りや絵画によく描かれた果実のひとつで、第三王朝期のお墓やピラミッド・テキストにも記録があります。先王朝時代の遺構からシカモアイチジクの実物が出土しています。また、ラムセス3世はテーベ(現ルクソール)のアメン・ラー神に15500籠という凄まじい量のイチジクを奉納したそうです
シカモアイチジクの木は、愛と母性の女神ハトホルと天界の女神ヌゥトの化身だとする古くからの言い伝えがあります。それゆえ神々のもつ神性や母性の象徴でもありました。大量に実をつけることや、たくましい樹木や葉が日陰をもたらすことが関わっているのかもしれません。貧民食に向いているという記述も残っています
薬用として、子どもを産める女性とそうでない女性を見分けるための飲み物に調合されました。葉はカバの咬み傷に、溶液は黒くなった傷痕を消すために塗られていました。また果実とバラの油を混ぜて湿布薬とし、熱病患者の腹部にあてれば回復効果があるとされていたそうです
古代中国人にうるおいを与えた話
中医学でイチジクは瀉下(しゃげ)類という位置付けにあります。瀉下作用、つまり胃腸運動を促進して排便を円滑にする働きをもつということです。ほかにも中医学の言葉で「健脾益胃通便」「潤肺止咳」「消腫解毒」という効能もあるそうです。読めませんが意味はなんとなく分かりますね
五気の寒性、涼性、平性、温性、熱性のうち平性にあたり、六味の酸味、苦味、甘味、辛味、鹹(かん)味、淡(たん)味のうち甘味の特質をもつ食材です。帰経によって作用する臓腑は小腸、膀胱、大腸とされます
食物繊維が豊富で整腸作用、便秘改善に良いとよくうたわれていますが、排便を促進させるには便秘の原因にあった食薬と組み合わせるのが重要だそうです
ここで肺について触れたいと思います。肺は呼吸と気をつかさどる臓で、人は呼吸によってその体内の水分(陰液)を運行、分散させます。陰液は臓腑を潤して栄養しながら腎と膀胱へと送られ、尿となり排泄されます。さらに呼吸にあわせて横隔膜が上下することで大腸が刺激されて、伝送の役割が促されます。つまり肺と大腸は、中医学的に非常に深い関わりがあるとされているのです
それから陽盛体質といって、臓腑のはたらきが強すぎることによって現れる体質があります。成長期の子どもや若者、要は元気な人には陽盛体質が多いです。この体質は過食、過労、精神的刺激によって異常に熱をもつことがあります。とくに大腸に熱がこもっている状態を大腸実熱体質といいます
大腸実熱体質の人は、乾燥する秋に肺と大腸の陰液が消耗して便秘になり易いので、大腸を潤す必要があります。生のイチジクが市場に出回るのは、だいたい8月から10月です。ちょっと乾燥してきたなあと感じ始めたときにこそイチジクを味わいたいですね
イチジクの木は暖かく乾燥した気候を好むそうですし、ほんと理に適っているなあと痛感します
現代版おいしい食べ方
イチジクはバナナやアボカドのように追熟できる果物で、おしりが割れてくると食べごろです
軸の方から縦に半分に切って、スプーンで掬うようにすると、手軽に皮のきわまで味わうことができます。もちろん皮を剥いて食べるのも有りで、その場合は縦に四等分にしたり、輪切りにしたり、大きさを決めてから最後に皮を剥くのがやり易いみたいです
ほかの食材と合わせるなら、生ハムやクリームチーズが定番です
もう少し手を加えるなら、シナモンパウダーと砂糖と合わせてふりかけ、オーブンかグリルで焼いたり、八角と合わせてジャムやコンポートにしてもいいです。コンポート、ジャム、チャツネをつくる際に、フェンネルをホールで炒って加えるのもよさそうです
参考:
吉村作治「ファラオの食卓 古代エジプト食物語」小学館ライブラリー(1992), p.153,154
辰巳洋「実用体質薬膳学」東洋学術出版社(2016), P.14, 32, 77, 156
くだもの委員会「果物の美味しい切り方・むき方」産業編集センター(2015), p.40-43, 91, 92
スチュアート・ファリモンド「スパイスの科学大図鑑 香りの効果的な引き出し方や相性を徹底解明」誠文堂新光社(2021), p.81, 91, 95
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